アメリカンビューティーで、バラの花びらに包まれたミーナ・スヴァーリは衝撃的でした。スピルバーグがシンドラーのリストで少女に使った『赤』もショッキングでしたが、ここでも『赤』は鮮烈な印象を与えています。グラフィックの世界でもこの色は特別で、いろいろな人が印象的な作品を残しています。マティスの赤も有名ですね。
この映画はミーナ・スヴァーリのポスターからは想像が出来ないくらいシィーリアスです。日常生活の中で自分を見失ってしまった人が、なにかをきっかけにそれに気ずき、自分を取り戻すというストーリーは、1980年度のアカデミー賞を受けたロバート・レッドフォード監督の『普通の人々』のなかでも、重く描かれています。
しかしこの『アメリカンビューティー』の見どころはすばらしいユーモアのセンスです。女子高生にもてたいために一生懸命身体を鍛える中年のおやじや、窓から覗いて、てっきりホモと勘違いしてしまう隣の元大佐。いかにもといった顏の不動産セールス王。リストラ、不倫、親子の断絶、と続いても、人生は思わず吹き出してしまうシーンに満ちているわけです。いってみればそれを笑えるか、笑えないかということでしょうか?
この脚本の素晴しさは、主人公の視点から来ているようです。それはこの映画の最初と最後の独白で知らされます。